血みどろの銃剣は胸の奥底に





呑んでしもた
呑んでしもた
馴染みの居酒屋で
呑んでも呑んでも酔わない悪酒
呑んでしまいました
えらいすんまへん
申し訳ござりまへん
教え子の女子大生に熱っぽい口調で
わが従軍体験を語り聞かした日の帰り道。

呑んでしもた
呑んでしもた
小綺麗な女将がいる居酒屋で
むっつり、しかめ面の黙んまり酒
呑んでしまいました
えらいすんまへん
申し訳ござりまへん
なぜか空しく淋しく悲しくて
ひどい自己嫌悪に落ち入ってしもて。

呑んでしもた
呑んでしもた
ビール二本に酒七本
それでも酔えない茶碗酒
呑んでしまいました
えらいすんまへん
申し訳ござりまへん
もう戦争の話なんかするもんか
敵兵を突き刺した
血みどろの銃剣は胸の奥底に。



ホームページへ


井上俊夫詩集『従軍慰安婦だったあなたへ』全編目次へ戻る