私が戦争の詩を書いているのは

誤解しないでおくれ
私が戦争の詩を書いているのは
反戦平和の運動家みたいな
ポーズをとりたいためじゃないんだ

間違わないでおくれ
私が戦争の詩を書いているのは
若い人たちに 戦争体験を
伝えたいためじゃないんだ

勘違いしないでおくれ
私が戦争の詩を書いているのは
みんなに戦争の恐ろしさ空しさを
考えてほしいからじゃないんだ

早合点しないでおくれ
私が戦争の詩を書いているのは
敵の弾丸でたおされた
哀れな戦友たちを弔うためじゃないんだ

勝手に決めつけないでおくれ
私が戦争の詩を書いているのは
誰かに私の詩を
読んで欲しいからじゃないんだ

私は誰よりも私自身のために
戦争の詩を書いているんだ
五十有余年もの昔
二十歳のうら若さで
天皇の軍隊の制服に身をかため
手に三八式歩兵銃をひっさげ
腰に銃剣をぶらさげて
野牛のように中国大陸に乗り込んでいった
一人の無名兵士に問いかけるために
私は詩を書いているんだ

井上俊夫よ
お前は中国のどことどこの村を
砲車と馬と軍靴で砂塵をまきあげながら
通り過ぎていったのか
お前の眼は中国の村で
いったいなにを見たのか
お前の耳は中国の村で
どんな音を聴いたのか
お前の鼻は中国の村で
なんの臭いを嗅いだのか

そしてお前の両手は
中国の村で いったいなにをしでかしたんだ

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