井上式『私語研究序説』





小山若葉、長谷美津子、住田あかね、
滝本夕湖、土居容子、富永琴美、
落合雅代、吉沢亜紀子、河合真穂、
西 須美子、青野桃代、原 奈津子、
姫山小百合、宮木 馨、養父政恵、
益田朋未、塩野理恵、平井あゆみ、
柳原 緑、伸山淳子、島本マキ、
以上二十一名の者
教壇の前へ出て来い! 
そして一列横隊に並べ!

お前たちは今、
なんで前へ呼び出されたか解っているやろ!
授業中に喋ってはいかん
私語してはならんと
先生がいつも口を酸っぱくして注意しているのに
お前たちの態度はいったいなんだ!
先生をなめとるのか!
今日という今日は、もう我慢がならん!
今からお前たちに
先生がむかし軍隊で習うた
<帯革バッチ>というのが
どんなもんか教えてやる!
さあ、みんな両足を少し開いて
歯を食いしばれ!
眼鏡をかけている者ははずせ!
 
こう言うと、私は今日のためにわざわざ用意してきた
幅四・五糎、厚さ四粍という
旧日本軍の兵士の帯革とほぼ同じの
頑丈な牛革製ベルトを二つ折にして
右手にしっかと握りしめ
当年とって十九か二十という女子大生の
生っ白い顔めがけて
片っ端から殴りつけていった。

天下一品の派手な音を立てて
ベルトが娘たちの柔らかい皮膚に食い込み
泣き出す者、
のけぞる者、
鼻血を出す者、
ぶっ倒れる者、
鼓膜を破られてうずくまる者、
恐怖のあまり失禁する者、
逃げ出そうとして逃げ出せない者。
百名からの学生が居並ぶ大教室は
たちまち阿鼻叫喚の地獄。

しかし、もう今日限りで
大学をやめるつもりの私は平気だ
年頃の娘に
旧軍隊式の野蛮なリンチを加えた老講師がいると
マスコミが騒ぎたてようと
父兄が私を訴えようとかまうもんか。
授業中に堂々と私語してはばからない
現代のお化け学生を
徹底的になぐりつけたいというのが
年来の私の悲願だったのだ
これをやらんことには死んでも死にきれんのだ。

私は娘たちの顔が変形して
『東海道四谷怪談』のお岩のような顔になるまで
殴りつづける!

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