みんな死刑





はげしい吹き降りをものともせず
全身びしょ濡れになりながら
男と女がキスしている。
喧嘩ばかりしていたくせに
実は二人は愛し合っていたのだとさ。
ふん、まったくいいかげんなラストシーン
あのおもわせぶりなラブシーンはなにさ
やたらと雨なんか降らせやがって
下手に雨なんか降らせる監督は
死刑だ。

いまいましい思いで映画館を出ると
なんと外界は三十六度のカンカン照り
もう九月だというのに
豪勢な驟雨の一つも降らさず
世の中を一向に涼しくしてくれない神様なんて
死刑だ。

焼け付く舗道を
まっすぐこちらに向かって歩いてきながら
スクリーンの女のように
いきなり私に抱きつき
激烈な愛の告白をしそうにもない
あの赤いワンピースのお嬢さんも
死刑だ。


井上俊夫詩集『従軍慰安婦だったあなたへ』全編目次へ戻る

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