お化粧する虹





野っ原に
でっかい虹が出た。
坊やがそれをみつけた
生れてはじめて見る虹
裏の井戸端にいる母にも
ぜひ見せてやりたいと思った。
だが坊やはいまだに
「虹」という言葉を知らない。
ひたすら母の袖をひっぱった。
うるさいね、この子は
オヤツをあげたばかりやのに……
母は洗い物から
手をはなそうとしない。
坊やは泣きべそをかきながら
庭へもどった。
すると
坊やの大粒の涙のレンズの中で
虹はいっそうあでやかに
お化粧して
ゆらりゆらりと
揺れはじめる。


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